2020/8/16

後医は名医

じめじめとした暑さが続いておりますが皆様お元気でお過ごしでしょうか。
 
今日まで4日間クリニックは夏期休暇を頂きました。
都知事さんが「特別な夏」を猛アピールされておりましたが、私も「特別何もしない夏」で過ごしました。
不本意だったのは、家中のカーテンを洗濯する過程で机の上から足を滑らせ、お尻と頭を強打してしまい、休み後半は全身むちうち状態だったことです。
自分の筋力とバランス感覚および瞬発力を過信していたばかりに痛い目にあいました。とりあえず生きていてよかったです。
 
話はころりと変わりますが、「後医は名医」という言葉を聞いたことがありますか。
簡単に言うと、後から診察した医師は名医と判断されるという意味です。
 
★小児科でよくあるケース その1
熱の始まりに小児科を受診し風邪と診断される→熱が下がらない→再診する→元気なためもう少し様子を見ましょうといわれる→発疹や目の赤みなどが出現し他の小児科を受診する→「川崎病」と診断され入院。
 
★小児科でよくあるケース その2
熱と咳で受診する→かぜと診断され風邪薬をもらう→熱が下がらない→再診する→血液検査でウイルス性と判断され呼吸状態も悪くないため様子を見ましょうといわれる→熱が下がらず咳が悪化→他の小児科を受診し「肺炎」と診断され入院
 
患者さんは、後から受診した小児科の先生が「川崎病」や「肺炎」を診断してくれた名医と考えるでしょう。
これは、勤務医時代に多くの患者さんからお聞きした「あの先生は風邪だといったんです。」という不満そうな訴えからよく理解できます。
そして「後医は名医」ということわざ(なのでしょうか?)を知った時、なるほどと納得したものです。
でも、両方のケースにおいて、入院する直前に受診したクリニックや総合病院の医師が名医だったというわけではありません。
小児科医であれば、熱の出始めに診察をして全身状態が良好の場合、過剰治療せずに必要最小限の楽になるお薬を処方して経過をみるのが正しい治療です。
なんでもかんでも熱がでたら抗生剤という時代があったから、今耐性菌の問題で世の中は大変なことになっているのです。子どもで熱がでたら抗生剤が必要なケースは1-2割ですから薬局には抗生剤は売っていません。
また初期にどんな治療をしたとしても川崎病を防ぐことは出来ず、数日して症状が出そろって初めて川崎病と診断されます。
ウイルス性の肺炎はCOVID-19の経過をみれば理解できると思いますが、どんな治療をしていても1日で肺炎に進展することはあり、初期治療としては症状を軽減する薬しかなかったことになります。
 
大事なことは、自分のかかった病院でまずはしっかりと経過をみてもらい、診断や治療に納得がいかないのであれば説明を求め、再診すべき目安や悪化時の注意点を理解することだと思います。
そうすればあなたのかかりつけの医師もきっと「名医」だと気づくでしょう。
 
因みに私は「名医」と呼ばれるほどの医師ではありませんが、一番最初にお子さんを診察するかかりつけとして、正しく診断し適切な治療でご家族と一緒にお子さんをサポートしていきたいと思っています。ちょっと心配なときには無理せず、総合病院の先生に検査や治療をお願いし助けてもらっています。
 
それでは皆様、どうぞお元気でお過ごしください。