2024/7/5

溶連菌は奥が深い!?

今日から小学校は夏休みとなり予防接種のお子さんが多数来院されています。
園では手足口病やヘルパンギーナが流行しており、高熱で来院するお子さんが多い状況です。高熱がでても2~3日で下がることが多いので、水分をしっかり摂りながら安静にしてお過ごしください。
 
さて、今日は夏風邪ではなくて溶連菌についてお話したいと思います。
 
お子さんがのどが痛くて発熱があるとします。問診には「周囲で溶連菌が流行っている」と書かれてある。お子さんののどを「あ~ん」して見たがほとんど赤みがない。
 
このような状況で医師は溶連菌検査を行うべきでしょうか…。
 
実は溶連菌は集団生活をされているお子さんの2割程度が保菌すると言われています。保菌とは「病原性がない菌がそこに存在している」状態で、つまり「常在菌」です。
私達の身体のあらゆる場所、例えば気道や腸の中、皮膚には何万種もの病原性をもたない菌やウイルスが存在しています。溶連菌もこのような状態で、のどの周辺にいながら悪さをせずに居座っていることがあるということです。
 
溶連菌が病原性を持っている時、発熱したりのどが真っ赤になったり扁桃腺に白いぶつぶつがでたりします。また幼児以降の小児期には免疫反応で顔や体に赤い紅斑(発疹)がでることもあります。この場合には、除菌の必要があるということになります。
 
そこにただ居るだけの溶連菌は、基本的には除菌の対象にはなりません。
この常在している溶連菌を退治しようとすると、必要のない時に何度も抗生剤を内服することになり、身体中の常在菌をどんどん壊していくことになり、色々な菌が抗生剤に打ち勝とうとする耐性菌となり本当に必要なときに効かなくなってしまいます。
 
発熱などの症状があったときに、なんでもかんでも抗原検査をすれば良いわけではありません。絶叫し暴れたり嫌がるお子さんにストレスを与えることにもなり、採取するほうも「痛い検査でごめんね」という気持ちになるものです。また発熱があったからといって手当たり次第に検査するのであれば診察する医師の必要性はなくなりますし、何より医療費の無駄です。また抗原検査は偽陽性や偽陰性もあり、結果がすべて正しいとは限りません。
 
ですので、上記の
 
>このような状況で医師は溶連菌検査を行うべきでしょうか。
 
の答えは、私はノーと考えます。
むしろ、のどがあまり赤くならない感染症、例えばコロナやマイコプラズマや多数のウイルス感染などを疑い、慎重に経過をみながら適切な時期に検査をしていくのがよいと思います。
 
医者は、診察をした後に「風邪です」とお伝えすることがあります。「風邪」とは、「子どもの風邪」という本を執筆されている西村先生も仰っているように、「今は経過をみてよいけれど、悪化したら適切に対処したほうがよい」感染症ということです。
つまり、今は(今日は)検査をせずに経過をみても大丈夫ですが悪化したら必ず受診してくださいという意味です。
 
風邪と診断したお子さんに不必要に抗菌薬や風邪薬を処方するのではなく、薬を使う根拠を十分お話した上で、お互い納得の上で治療していくことが大切です。