2022/6/27
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片頭痛の新薬体験記 |
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全国的に暑い日が続いていますね。 札幌にもいよいよ夏が到来し気温が上がっているため、クリニックではエアコンを稼働しながら換気を継続しています。 COVID-19の患者さんは大分減ってはきたものの、ルート不明の陽性の方もちらほらおり、まだまだ気を引き締めて感染に気を付けていかなければなりません。 さて、今日は片頭痛の新薬についてのお話しです。 世の中コロナで大変なさなか、最近飛躍的に新薬が開発されている分野だと思うのは、アトピー領域と片頭痛領域です。(私の勝手な主観ですが…) 春は気圧の変動も激しく、片頭痛で大分辛い思いをしている方も多かったのではないでしょうか。私もクリニックの頭痛持ちのスタッフも、どよーんとした日は同時に頭痛が起こっていました。 クリニックには、毎日のように頭痛主訴の患者さんが来院しております。 特に最近相談が多いのは10代のお子さん達です。 10代のお子さんの頭痛は、起立性調節障害に伴う慢性頭痛、スマホやゲーム関連に由来する緊張性頭痛、不登校やストレスなどが絡む心因的な頭痛など診断は多岐にわたり、片頭痛だけではありません。 当院では一般問診表の他に頭痛問診表を記載して頂いておりますので、頭痛以外にも気になる症状がある場合にはぜひお伝えください。 片頭痛の新薬の話にもどします。 6月に販売開始になったばかりのレイボー(商品名)体験記です。 この薬は鎮痛薬ではありません。 片頭痛の病態には、中枢での疼痛シグナル伝達と、末梢・三叉神経(側頭部から顔周辺の神経です)の過活動が関係しているとされています。 脳や神経系に発現するセロトニン1F受容体が、疼痛シグナルの伝達や三叉神経が過剰に活動してしまうのを調整していると考えられていますが、この薬は、セロトニン1F受容体にくっついて作用し痛みの神経伝達物質の分泌を減少させ片頭痛を抑えると考えられています。 因みに2001年から2004年の間に次々と発売となったトリプタン製剤というものは、三叉神経終末のセロトニン5HT1D受容体を刺激することで炎症を起こす物質の分泌を抑制し、血管の過度な拡張や炎症・痛みを抑えると考えらえています。私のお好みはアマージ(商品名)という薬で後発薬品もあり、少し効きがゆっくりめですがその分副反応もやや抑えられ効果時間が長めに続きます。 今回発売されたレイボーがトリプタン製剤と異なるのは、レイボーが血管収縮に影響するセロトニン5HT1D受容体への作用がないため、トリプタン製剤で禁忌とされてきた心血管系の基礎疾患を持つ方へも使用できるという点です。 詳しい作用は理解して頂かなくても問題ありませんが、気になるのは片頭痛に対する効果です。私が筋金入りの片頭痛だということをご存じのMRさんが発売前に何度か説明にいらしてくれました。そして力強く、「レイボーは痛くなってから飲んでも効果があるんです。」と言っていたので内服できる日を楽しみに待っていました。 そして6月中旬の発売後、晴れてその日はやってきたのでした。 ☆頭痛1日目 どよーんとした天気で朝から頭が重い感じでした。午前の診療中に少しずつ側頭部のずきずき感が始まりました。いつもはこの辺りで、五苓散や呉茱萸湯、鎮痛薬やトリプタン製剤を内服することが多いのですが我慢し、昼休みにレイボー100㎎を大きな期待を込めて内服しました。 30分から40分で目の前がふわふわしめまい感がありましたが40分後に頭痛は完全に消失していました。でも午後は強い眠気がありました。 この日は合格! ☆頭痛2日目 その日の夜に途中で目覚めた所、頭重感が強くこれはくるなと感じました。なかなか眠れず頭痛が強くなってきましたが、「レイボーはどれくらい効くか」というミッションが与えられているので我慢して薬を内服しませんでした(半分は眠くて面倒だった)。 そして朝、ガンガンと痛くなった段階でレイボー100mgを内服しました。前日感じたふわふわ感はあまり感じませんでしたが、頭痛はわずかに改善したかなという程度。午前中は鎮痛薬を内服せず、我慢して経過を見ました。24時間で200㎎以上内服できない薬なので24時間を過ぎた時点でもう100㎎追加するものの、頭痛は治らず。午後の途中で鎮痛薬や漢方を追加しました。 ☆その後 初日から3日間ほど頭痛は持続しました。レイボーも時間と量をみながら追加しましたが完全には治りませんでした。トリプタン製剤や鎮痛薬、あまりに辛くて座薬まで使いました。 残念! 結論です。 片頭痛は症状が軽いうちに薬を内服したほうが効果があります。 片頭痛の病態を考えると、神経伝達物質が大量に出る前に内服したほうが効果があるに決まっています。 薬の説明用紙にも、「片頭痛発作がおきはじめたら、我慢せず早めに服用しましょう」と記載してありました。 トリプタン製剤同様、片頭痛確定の方は早めに内服を心掛けたほうが良いでしょう。 このほかにも、予防的な注射薬も発売されています。エムガルディやアジョビという商品名の皮下注射薬です。 定期的に注射し薬剤を体内に入れることにより、片頭痛のときに放出される発痛物質(CGRP)をすぐに発見しやっつけてしまうという予防薬です。 当院では行っておりません。 そして高額のため私自身も使用していません…。 長々と記載しましたが、頭痛でお困りの方はどうぞご相談ください。 それでは皆様元気にお過ごしください。 |
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