2022/9/11

不登校について思うこと

小中学校、高校の夏休みが終わり新学期が始まっています。
犬の散歩中、登下校の子ども達とすれ違いながら、みんな楽しく登校しているかなと眺めていますが、1学期にやっと登校していたお子さんは夏休み明けの登校が大変な時期かもしれません。学校へ行っていても、朝になると頭痛や腹痛、起きられないなどの不調を訴えて何かしらのサインを出してくれることが多い時期です。
 
クリニックにはこのようなお子さんの相談が連日あります。
自分で受診したいと思ったのか、親御さんが受診を勧めたのか、受診動機はいろいろあるかと思いますが、とりあえずクリニックで相談してみようと来院してくれたのは大きな一歩だと思います。
お子さんが学校に行かなくなり自宅にいる時間が増え、不調を訴えたり引きこもりがちになった場合、親御さんが不安で心配になる気持ちはとてもよくわかります。私も同じ経験がある母親なので、親の絶望感や不安な気持ちには心から共感することが出来ますし、これまでの当たり前の日常がガラッと崩れてしまったように感じたことを覚えています。
でもそのような経験をさせてもらい、親も子どもも他の家族も沢山のことを学び、少しずつ変化し大きく成長させてもらえたと今では心から思えますし、幸せになる人生のスタート地点だったのだとも感じています。
 
診察室でお子さんと一緒の場合、私は親御さんへの労いの言葉をかけたりはしません。学校に行けなくて自分を責めたり、親への期待に応えらないと感じ自分を責めて辛いのは親よりも子ども自身だと思うからです。
無理して登校を続け、誰にも相談できず命を絶つお子さんや、他人を傷つけてしまうお子さんもいます。自分を守る手段として登校を辞める選択が出来たお子さんをまずは認めてあげてほしいと思います。
 
学校に行けるようになる魔法の薬はありません。
私が小児科医として出来るのはまずは誰かに相談しようとする勇気を持ってくれたことを労うこと、起立性調節障害や他の体の病気がないかを確認すること、うつ病疑いや精神症状の強いお子さんに心療内科の受診が必要か判断すること、また不登校で起こる不安や不眠、その他辛い症状に対して軽減する漢方薬などを処方することです。
不登校を治してあげようというつもりはないですし、一時的に無理して登校しても解決するどころかもっと深刻な状況になることもあることから、親御さんが子どもに学校に行って欲しいという訴えがある場合や、「病院に行ったら学校に行けるようになるかも」という気持ちで受診された場合は、お子さんにとってむしろ危険だと思えるため、敢えて「心がしんどい場合は無理しなくていい」と伝えています。
学校に居場所がないと感じる真面目で繊細で優しい子どもがせめて家族の中では笑顔でいれて、また自分の家が居心地の良い場所になるようにと願っています。
 
心療内科ではないので、日々の診療の中で長くお話しをすることが出来ず心苦しいのですが、お困りな方はどうぞ一度クリニックに顔を出してみてください。